2025年度公立高校入試問題講評

国語、数学、英語は塾長秋山が作成。

理科、社会は統括阿部が作成しました。

国語 講評

大問一 漢字は読みが3つ、書きが3つ、用言の判読と楷書行書の判読が1つずつ。コロナ禍の中でおろそかになったであろう、「日本語のつくり」に関する部分に焦点をあてた問題だと感じる。漢字の読み書きは標準レベルであるから、第一問は大きく落としたくはないところである。

大問二 グループワークを基調とした設問で,ほとんどが選択肢問題で構成されていた。1つだけ敬語表現(謙譲語)の記載問題があったが、日常生活で使うレベルのもの(『聞く』の変形)であり、差がつかない。第一問同様、大きくミスをしないようにしたい。

大問三 中高生をテーマとした小説ではなく、大学生をテーマにしたものが出題された。文章量は片面目いっぱいではあるが、1Pで収まる程度の長さであり、訓練している生徒は時間は余る内容だと思われる。6つの設問中3つが選択問題、抜き出しの問題が1つ、25字と55字の記述問題が各1つであった。語気の強めの登場人物の心理描写、リード文の思うように小説の書けない主人公の立場と、傍線部近くの心の熱量との葛藤を、上手く言葉にできるかは訓練を要するであろう。

大問四 論説文問題も1Pで収まる長さであった。小問5つ(1つはさらに2問に分かれ実質6問)で記述問題と記号問題は半々であった。記述は20文字程度と指定されたものは穴埋め前後の言葉から必要なものを見つけやすいものであり、差がつかない。55字以内と指定されたものも、どのようなものかという言い換え(抜き出し+ニコイチ、サンコイチ問題)の典型題であるから、加点要素となるキーワードを使い無難に記載したいところ。

大問五 今年は漢文ではなく古文問題であった。例年のごとく、要所には現代語訳の補足があり、古文として解くというよりも、会話文の流れを汲んで該当箇所を見つけて書き出すことを要する問題構成である。現代仮名遣いは例年通り1つ出題で純粋な古典問題はこれだけ。繰り返すが、宮城の高校入試の古文や漢文は、現代文の補足の正しい読み取り問題だと思いアタックすべきである。(高校入学後の古典は難しい。文系で進学校に進んだ人は補足なしの古文に慣れる必要がある。これが古典と思ってはいけない。)

大問六 160字~200字の作文の設問である。『会話文を踏まえて』というところがミソ。ギリギリで書き上げた人はそこを見逃したのではないだろうか。テーマ自体『言葉の変化』という解答が書きやすいものであった。それ故に、会話文の中で繰り広げられた「言葉が見直される」ということに着眼せず、書いた人もいるかもしれない。国語は問題の指定文の読み取りが最重要。作文だけでなく、何を問題作成者が欲しているかを読み取るのも国語力である。

数学講評

大問1

例年通り計算問題と作図問題で構成されている。作図は実際に書かせるものではなく、正しく作図する上で、誤っているものを選ぶ少々風変わりなものだった。計算は1つも落としてはいけないレベル。度数分布表の問題も累積相対度数を求める程度の易しいものだった。(箱ひげ図で四分位数を段階的に見てとる問題や読み取りの正誤問題だとガクッと正答率が下がる。)

大問2

比例反比例のオーソドックスな問題は是非とも解きたい。二次関数は計算でaを求めてそれで終わらせた人は日本語を読んでいない人である。(yをxの式で表せという指示だった。)確率は一見日本語が複雑に見えるが、往復運動が伴わないボードゲームのような問題であった。全事象が16通りしかないのだから、不安な人は総当たりで書き出して解くべき。相似比と体積比の関係を問う問題は落としたくない。その下の空間図形の体積問題は図形的に90度を示されかつ断面が取りやすく、工夫せず解ける問題であった。方程式の立式問題はPだとかQだとか惑わされず、1変数(x)を置いて誘導通り立式すれば解ける問題だった。確率と立式問題は国語力が要求されている。

大問3 ガスボンベの残量を縦軸にとる1次関数の問題であった。使用した量でなく、残量である点に注意しなければいけない。ここも日本語が問われている。グラフ自体はシンプル。問題文から強火と弱火の傾き(単位時間あたりの消費量だからマイナスをつけるのを忘れない。)が読み取れる。「傾きが分かり、1つ座標が分かる」もしくは「座標が2つ分かる状態」で直線の方程式をミスなくおけるか(数IIの計算をマスターしていると楽。)が肝の問題であった。そして最後も、(おそらくxで方程式を解くが)残量を求めよとの指示である。ここも国語要素がある問題であった。

大問4 久しぶりの円の絡む図形問題である。今回は同じ長さの弧が与えられているし、直径が水平で書かれているので、数IIの円の方程式と点と直線の距離で連立方程式を立て、点Dを座標化して、各座標を各個撃破していく戦法をお勧めしたい。最初の三平方定理の問題や証明問題は是非解きたい。証明問題は、日本語を丁寧に見て(垂線の指示がある。)、同じ長さの弧から円周角を使うと見て取れるはず。小問3,4は先取りしている者がやはり有利である。

英語講評

大問1 例年通りのリスニング問題であった。

大問2 間接疑問文と助動詞の典型文の並びかえ、文法問題は総じて易しいものしか出されていない。付加疑問・否定疑問・仮定法などは敬遠されているのだろうか。今年は単語を書くのを要求されることもなく、前半は確実に点が取れるセクションであった。後半は英語と言うより図の判読問題で、ここはサクッと満点を取りたい。

大問3 指示語の抜き出し、人称変化と時制の注意を問う英文問答、時系列問題などほぼ例年通りの内容である。指示語の問題は選択肢付きで外してはいけない。下線部の理由を問う問題は、「so」があるから見つけるのは容易なはずである。問題時系列問題は、マラソンに対する主人公の対応が過去(歩く)今(走り切る)の構造を見抜けないと欠点となるであろう。宮城の英文は引っかけの要素がない素直な文で、教育的結末(悪い→感化・変化→良い結末)の予測である程度解けてしまう内容ではある。

大問4 4名の会話で、最初の小問だけ2名以上の内容の処理を含むものであるが、扱う単語から推測は容易であったろう。以後の設問は、1名につき1つの枠内の文章群を見るだけで答えられる。ヒット&アウェイ型の問題である。ここは高得点を狙うなら落としたくない。

4語で抜き出す小問はIt to構文の動詞の原形から推測できる内容であった。総じてこの大問は少し分量が増えたが、話者のブロックにピンポイントで目をやり必要な情報を抜く訓練で対処が可能である。大学入試英語の長文化に対して、問題作成者の意識・意図を感じる大問であった。

大問5 リード文が英語で表記されているので、太刀打ちできない生徒はいるだろう。もちろん難関校を狙う場合は、その限りではない。進学校を目指す生徒は意見提示、その理由の記載は定形文で対処可能だし、ここは文法やスペルミスなく無難に乗り切りたい。

社会講評

昨年度に比べて、やや難化したと思われます。

記述問題の採点次第ですが、平均点は50点程度と思われます。(昨年度59点)

大問構成は地理2題、歴史2題、公民1題、歴史公民の総合問題1題の構成でした。昨年度に比べて、公民分野からの出題が減少しました。また歴史では例年に比べて日本史からの出題が少なく、世界史分野からの出題が増加しました。決して難しい問題ではありませんが、選択問題ではやや細かな知識が必要だったり、受験生が苦手とする(ロックとルソー、どっちだっけ?のような)問題があり、受験生を悩ませたことでしょう。さらに記述問題5題中、2題がかなりの難問だったため、昨年より平均点は低下するでしょう。

以下、大問ごとの分析となります。

大問1(歴史)

人権保障に関する歴史の問題でした。どの設問も決して難しい問題ではありませんが、時代ごとに各国で起きた事象を正確に把握する必要がありました。偏差値50前後の学校ではこの大問で差がつくと思われます。上位校では完答すべき問題です。

大問2(地理)

中国・四国地方に関連する問題です。2の工業地帯・地域に関する問題は、上位校で合否を分ける問題になったでしょう。工業地帯・地域のそれぞれの特性をしっかりと把握しておく必要がある問題でした。3(3)の記述問題は標準的な問題でした。

大問3(歴史)

古代から明治時代までの歴史の問題でした。1~3の並び替え・選択問題が、受験生からするとやや解きにくかったのではないでしょうか。ここで全問正解できたかが上位校では差になったでしょう。5の記述問題は難問でした。上位校を受験した生徒でも正直何を記述すればよいのか、相当悩んだと思われます。この問題では差がつかないと思いますので、この問題の正誤で合否に影響を及ぼすことはないでしょう。

大問4(公民)

内閣や国会、累進課税制度に関する問題でした。1~3までは易しかったでしょう。偏差値50前後の学校では、この設問で確実に点を取ることが重要だったと思われます。4の記述問題は難問だったと思われます。他県の入試問題でも見たことがないような内容だったため、かなり苦戦を強いられたと思われます。また何を記述すればよいか判断がつかなかった受験生も多いと思われます。

大問5(地理)

アフリカを中心とする世界地理の問題でした。資料の読み取り問題が多かったため、地理が苦手な生徒は苦労したと思われます。4(2)の記述問題は他の記述問題に比べて易しかったと思います。

大問6(歴史・公民)

環境問題に関して、歴史・公民分野からの総合問題でした。選択問題に関して、昨年度に比べるとやや細かな知識が問われており、あまり自信をもって解答できなかったという生徒も多いことでしょう。4の「パリ協定」は上位校を受験した生徒は間違えてはいけない問題です。5の記述問題は標準的な問題でした。

理科講評

昨年度と同程度の難易度と思われます。

平均点は55点~60点程度と思われます。(昨年度56点)

大問構成は例年通り、生物・化学・物理・地学からそれぞれ2分野ずつの出題となりました。どの分野もまんべんなく学習に励むことが必要でした。知識問題、実験結果の読み取り、計算問題などバランスよく出題されていました。

以下、大問ごとの分析です。

大問1

各分野からの小問集合となります。1(光)、2(植物)、3(イオン)、4(大地)でした。どの設問も基本的な問題と言えます。仙台圏の上位校では1つもミスしてはいけない問題だと思います。一方で、偏差値50前後の受験生がやや苦戦した問題は3(3)と4(3)のプレートに関する記述問題と思われます。

大問2

中2の化学(炭酸水素ナトリウムの実験)からの出題でした。1~3は基本問題でした。4のpHの値の問題、5の計算問題が上位校では合否を分けたでしょう。普段から実験結果の正確な読み取り、質量に関する計算などを嫌がらずに練習できていたかがポイントです。

大問3

天気からの出題でした。1~4は天気図の読み取りや前線の断面図の問題など、受験生なら一度は解いたことのある問題ばかりでした。確実に点数にしてほしかった問題です。しかし5の記述問題はかなり難しかったと思われます。「閉そく前線」のでき方は説明を受けたことがあると思いますが、前線面をつくる気団の寒暖差に着目して説明するのはかなり難しかったと思います。上位校であっても、合否に影響することはないでしょう。

大問4

力のつり合いに関する問題でした。理科が苦手な生徒はかなり苦戦したと思われます。一方で上位校を受験した生徒は、この大問でしっかり得点できたかが合否を分けたと思います。大問2でも少し触れましたが、理科の計算問題から逃げずに、他県の過去問も含めて様々な入試問題を練習してきたかが重要でした。

大問5

植物・生物に関する問題でした。顕微鏡の使い方、有性生殖に関する知識問題など、どれも基本的な問題でした。5の記述問題も易しかったと思います。全受験生が得点してほしい問題でした。